19世紀フランス文学と政治
- 研究キーワード
- フローベール、自由主義、ロマン主義
研究シーズの内容
19世紀後半のフランスを代表する小説家、ギュスターヴ・フローベール(1821–1880)を中心に、近代フランス文学と政治イデオロギーの関係を研究しています。
二月革命の政治的挫折を経験した「幻滅の世代」に属するフローベールは、一般に「政治嫌い」の作家として知られています。しかし、彼が遺した書簡や執筆のための読書ノート、作品の草稿など、膨大な一次資料を丹念に読み解くと、その文学作品が同時代の政治イデオロギーと緊密に結びついていたことが浮かび上がってきます。
こうした問題関心に基づき、これまで『感情教育』や『ブヴァールとペキュシェ』などの作品群における政治表象を中心に分析を行ってきました。現在は研究対象を19世紀前半にまで広げ、初期ロマン主義から連なる思想的連続性を視野に入れながら、19世紀フランスにおける文学と政治のダイナミズムを捉え直す試みを進めています。
研究者からのメッセージ
19世紀を生きるフランスの人々は、社会のあり方を根本から変えてしまったフランス革命の余波とどう向き合うかという難題を突きつけられていました。当時の文学もこうした時代のうねりや政治的混乱と無縁ではなく、革命の遺産をいかに引き受けるか、あるいは拒絶するのか、という葛藤を内包しながら描かれています。文学と政治の関係という観点から当時の作品を読み解くことで、社会の変化が文学にもたらした影響、そして文学が変化してゆく社会にどのような視線を投げかけていたのかを明らかにしていきたいと考えています。
専門分野
フランス文学
授業の内容と特長
初級フランス語から、フランス語の講読、そしてゼミ形式の研究演習までを担当しています。なかでも講読の授業では、構文の正確な把握や時制・法の選択といった語学的な側面と、テクストの背景にある歴史的な文脈の双方に留意しながら、一つのテクストを丁寧に精読する読解力の涵養に力を入れています。
研究者になるきっかけは?
フローベールの『ボヴァリー夫人』を邦訳で読み、衝撃を受けました。いったいフランス語の原文はどうなっているのだろう、と気になってしまい、フランス文学研究の道に進みました。
研究内容を大学での教育や、地域・社会にどのように還元していますか?
日々の授業では、私自身の19世紀フランス文学研究から得られた新しい発見を還元するとともに、研究を通じて培ってきた、「一つのテクストを注意深く読み解く力」を学生の皆さんに伝えていきたいと考えています。また、今後は大学内にとどまらず、公開講座などを通じてフランスの言葉や文化、歴史の魅力を広くお伝えし、地域の異文化交流の架け橋になれるよう活動の幅を広げていく予定です。
学生や高校生にひとこと!
コスパやタイパが重視される現代において、あえて外国語で書かれた文学作品を読もうとする人は少ないかもしれません。しかし、あらゆるものが凄まじい速度で変化していく時代にあっては、目先のことにとらわれていると、変化の後追いだけで終わってしまいます。このようなときこそ、かえって視線を遠くへ向けてみることで、新たな発見があるのではないでしょうか。文学という窓を通して異文化を学ぶことで、皆さんの世界がさらに豊かに広がっていくことを願っています。
大学院で学びたい方にひとこと!
大学院を志望される皆さん。同じ研究領域を志す者同士、ぜひ共に学んでいきましょう。皆さんの探求のお手伝いができれば、私にとってこれに勝る喜びはありません。

