近現代中国における日本をめぐる「知」の形成
- 研究キーワード
- 日本研究、日本論、対日認識、知日家、知識と政治・社会

研究シーズの内容
専門は中国近現代史、日中関係史です。具体的には、20世紀前半の中国において、日本がどのように研究され、理解されていたのかを研究しています。
当時の中国にとって、日本は明治維新を経て近代化を進めた「学ぶべき模範」であると同時に、中国の主権を脅かす「警戒すべき脅威」でもありました。こうした日本をめぐる二重の位置づけのもとで、中国における日本研究や日本に関する知識は、政府・政党の政策や社会の需要・動向と深く結びついていたと考えられます。
そこで、従来の研究で必ずしも十分に注目されてこなかった日本研究専門の団体・雑誌などに着目し、近代中国において日本をめぐる知識や理解がどのように形成され、当時の政治・社会といかなる関係を有していたのか、という問題を検討しています。
この研究を通じて、ある国や社会が特定の「他者」をどのように理解し、その理解を知識として蓄積・発信していくのか、またその過程が個人の知的関心にとどまらず、政治や社会の動きとどのように関わるのかを考えています。近代中国における「知日」――日本を知り、理解しようとする営み――の歴史を手がかりに、知識と政治・社会の関係を明らかにすることを目指しています。
研究者からのメッセージ
中国や日中関係の歴史は単純な対立や交流の図式だけでは捉えきれません。ある出来事について、中国や日本でどのような主張や認識が見られるのか、なぜそうした主張や認識が生まれたのか、また学術研究によって何が明らかにされ、何がなお課題として残されているのかを確認しながら、複数の史料を丁寧に読み解いていくことが不可欠です。こうした作業を通じて、東アジアの歴史と現在をより多面的に考える視点を提示したいと考えています。
専門分野
中国近現代史、日中関係史
研究者になるきっかけは?
高校時代の北京修学旅行や大学時代の北京留学を通して、現地の中国の方々と交流する機会がありました。その中で、歴史上の出来事に対する見方が自分が歴史の授業で学んできたものとは異なることを実感しました。また、大学時代には日中間における領土や歴史認識をめぐる対立をニュースで目にし、歴史が単なる過去の出来事ではなく、現代の社会や国際関係と密接に関わるものだと感じました。こうした経験から中国近現代史と日中関係史に関心を持つようになり、中国における日本理解の歴史を考える現在の研究テーマにもつながりました。
研究内容を大学での教育や、地域・社会にどのように還元していますか?
中国や東アジアをめぐる問題は、政治・外交・安全保障・経済などの側面だけでなく、歴史認識や文化交流、日常的な相互理解のあり方とも深く関わっています。近年、愛知県を含む日本各地で多文化共生が進み、中国語圏からの留学生・移住者・訪日客との交流も日常生活の中で広がっています。また、グローバルに活躍する中国語圏の人びととは、日本国内だけでなく、世界のさまざまな地域で交流する機会が増えています。一方で、SNSをはじめとする交流の場では、誤解や不正確な情報に基づく議論も少なくありません。
こうした時代だからこそ、中国や日中関係を歴史的背景から多面的に理解する視点がいっそう重要になっています。研究で得た知見を日々の授業や公開講座などに活かし、学生のみなさんや地域の方々が東アジアの歴史と現在をより深く理解し、中国語圏の人びとの歴史的経験や立場を踏まえながら円滑に交流するための手がかりを提供できるよう努めたいと考えています。
学生や高校生にひとこと!
「歴史」と聞くと、過去の出来事の羅列や、受験のための暗記科目という印象があるかもしれません。しかし、歴史を学ぶことは、過去の人びとの考え方や社会のあり方を、その時代の文脈に即して理解することにつながります。そして、中国という他国の歴史を学ぶことは、異文化に対する見方や、現在の東アジアにおけるさまざまな問題を考えるうえでも重要な視点を与えてくれます。中国や日中関係の歴史を学びながら、過去を丁寧に理解するとともに、現代社会をより深く捉える視点と、異なる立場や背景をもつ人びとと対話する力を一緒に身につけていきましょう。




