地域に根ざした環境教育の理論と実践
- 研究キーワード
- 地域、環境教育、カリキュラム、エコペダゴジー

研究シーズの内容
私は、教育方法学およびカリキュラム研究の視点から、環境教育ならびに持続可能性やエコロジーに寄与する教育のあり方を探究しています。環境に関する知識の伝達や自然体験活動にとどまらず、持続可能な社会の形成を妨げている学校教育の深層的な要因を明らかにし、より豊かな環境教育の実践を創出することを目指しています。そのため、欧米のカリキュラム理論と日本の戦後教育学の双方を視野に入れながら研究を進めています。
日本の戦後教育学に関する研究では、1960年代から1990年代にかけて、公害や開発問題など地域社会の課題に向き合った教師たちの教育実践と、それを理論化した研究者に着目しています。とりわけ、藤岡貞彦、中内敏夫、大田堯の所論を、日本における環境教育の三つのアプローチとして位置づけ、彼らが高く評価した教育実践の分析を通して、それぞれの特質・意義・課題、および相互の関係性を明らかにすることを目指してきました。
欧米のカリキュラム理論に関する研究では、エコペダゴジーの成立過程と思想的系譜を検討するとともに、その理論と実践の体系的な整理に取り組んでいます。これらの研究を通じて、持続可能な社会の実現に資する環境教育の理論的・実践的基盤の構築を目指しています。
研究者からのメッセージ
「環境教育」と聞くと、ゴミ拾いや植林活動、環境問題の調査などを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、それらの活動も重要です。しかし、私は、知識を伝えたり自然と触れ合ったりする活動にとどまらず、持続可能な社会や自然と共生できる社会の実現を妨げている、より深層の原因を教育の中から探りたいと考えています。そして、特定の教科やテーマに限定されない、より包括的で豊かな環境教育のあり方を探究しています。
私が「深層の要因」として注目しているのは、現代社会に見られるさまざまな課題と深く関わる価値観や社会構造です。例えば、社会の分断を加速させ、人々の連帯を弱める競争主義・個人主義、あらゆるものを経済的価値によって評価し、特定の人や集団の所有にする人間中心主義・消費主義、社会的課題を個人の責任へと還元する新自由主義、多様な価値観の共存を阻む保守主義、さらに既存の権力構造や規範を不可視化しながら再生産する植民地主義などです。
そのため、環境教育は社会のあり方、学校教育のあり方を問い直す営みです。その対象領域は広く、課題もまた容易ではありません。生涯の研究テーマとして探究を続けていきたいと思います。
専門分野
教育方法学、カリキュラム研究
授業の内容と特長
社会問題や具体的な教育実践を取り上げながら、教育学の理論との往還を重視した授業を行います。また、新たな考え方や視点との出会いを大切にし、文献に基づく深い理解を目指すとともに、受講者同士の対話や議論を重視します。
研究内容を大学での教育や、地域・社会にどのように還元していますか?
社会を持続不可能なものにしている要因について、さまざまな事例を手がかりに学生とともに考えていきます。将来学校教員を目指す学生はもちろん、他学部・他学科の学生にとっても、市民として必要な素養を育む機会となるよう、これまで環境教育に取り組んできた知見を踏まえて授業を構想しています。
また、学校現場の先生方の実践から学びながら、その実践の価値や意義を理論的に位置づけ、広く発信することにも取り組みたいと考えています。さらに、環境教育の視点や地域社会の課題を取り入れた教育実践を学校現場とともに構想・実施し、その成果を共有する共同研究を進めていきたいと思います。
学生や高校生にひとこと!
さまざまな理論や実践、人との対話を通して、自分と世界とのつながりを見つめ、深めていきましょう。
大学院で学びたい方にひとこと!
自分の興味や関心のあるテーマにじっくりと向き合い、没頭できる時間は、とても幸せな時間です。



