教授

黄 東蘭

コウ トウラン

  • 外国語学部
  • 中国学科

更新日:2025.04.01

近代日本における中国史の通史的叙述

研究キーワード
支那史, 東洋史, 中国史叙述, 明治日本

研究シーズの内容

東アジアにおける「近代知」の形成という問題は、近年、日本や中国、韓国、台湾の学界において関心を集めています。私は、明治期に近代的学校制度が導入された後に刊行された漢史、支那史、東洋史の通史書を体系的に分析しています。この研究から、江戸時代の藩校の漢史教育で培われた漢学的中国史叙述が、ヨーロッパ近代の学問の影響の下で、いかに文明史、東洋史といった「近代知」に転換したかを明らかにしたいと考えています。

これまでに明治初期の漢文・和文の中国史関係の歴史教科書、ヨーロッパ文明史の影響を受けた田口卯吉の『支那開化小史』、明治期東洋史学の代表的成果とされる桑原隲蔵の『中等東洋史』の中国史叙述について分析し、国内外の学術誌や講演などを通じてその成果を発表しました。現在は、那珂通世や宮崎市定の支那史、東洋史の通史書のテクスト比較を通じて、「支那史」から「東洋史」への転換にともなう中国史叙述の変化を実証的に解明する作業に取り組んでいます。

研究者からのメッセージ

街に行くと、本屋の店頭には中国史関係の書物が多く並んでいます。そのなかには、中国崩壊論や中国脅威論を唱える文句が目に付きます。多かれ少なかれ、現実の中国と表象された中国との間に開きがあるのは、今の時代に限ることではありません。私が研究の対象とする明治時代の日本も同じ状況でした。明治の知識人たちがいかに現実の中国と向き合いながら中国の歴史を書き続けていたかを考察するのが私の研究テーマです。