中国近代の思想文化史、日中思想文化交渉、中国伝統思想の変容と西洋近代学術の導入、日本における中国認識やアジア主義
- 研究キーワード
- 清末中国、思想史、明治日本、東学、マルクス主義、アジア主義、梁啓超、李大釗

研究シーズの内容
清末から民国初期にいたる中国の思想史を研究しています。西洋列強による「半植民地」化の危機にさらされた中国が改革への模索を行った時期です。日清戦争の敗北も大きなきっかけになり、思想界では王朝体制を支える伝統儒教への批判と「再解釈」が試みられ、同時に中国を強国にするための西洋の思想や学術の導入が叫ばれました。一足早く近代化に成功した日本は、西洋の学術や思想――当時の言葉で「西学」――を紹介する書籍を豊富にもっており、そのような日本語の書籍は中国人にとって「東学」と呼ばれ(中国共産党の成立に寄与した社会主義思想の伝播もその一つでした)、西洋近代文明のエッセンスを導入する際に重視されました。明治日本は近代中国における近代的な知識や制度の生成に大きな影響をもたらしたのです。以上の見取り図を踏まえ、より大きく「中国の近代とは何か」を思想史研究の立場から問いつづけています。
研究者からのメッセージ
「改革開放」の1980年代から今日まで日本人の中国イメージは大きく変わりました。当時、中国が「経済大国」になると誰が予想できたでしょうか。また日中関係は悪化の一途をたどっています。現実の中国の変化は私たちの予想を裏切るほど激しく、専門家ですら予測がつきません。今こそ10年、20年ではなく、100年、150年の視野で中国や日中関係を考察する必要性を痛感します。
専門分野
中国近代思想
授業の内容と特長
中国近代の思想文化史を講じています。この時期、伝統儒教が変容し、西洋思想が大量に中国に導入されました。立憲構想や革命思想が唱えられ、近代的な学術が立ち上がりました。その過程で明治日本が取り入れた西洋近代学術がしばしば参照されました。そのため私の講義では、中国と日本の間を行ったり来たりする比較思想的な手法を用います。私のライフワークとして、『論語』と孔子、中国におけるマルクス主義学説、近代日本における中国認識、中国旅行記、アジア主義にも興味を持っており、授業でも随時言及します。中国を通じて日本を知り、日本を通じて中国を知ることを狙いとして、日本社会で生き抜いていく国際的な視野と学力を身につけていきます。
研究者になるきっかけは?
高校時代から漠然と歴史や思想の研究者に対するあこがれがありました。1980年代末に大学で第二外国語として当時マイナーだった中国語を学び、中国研究に興味をもち、中国思想史を専攻しました。その後、多くの幸運に恵まれ、夢がかないました。
研究内容を大学での教育や、地域・社会にどのように還元していますか?
近年、厳しい日中関係が続いています。日本人学者の立場から長い歴史的な視点から中国を研究することで、日本における中国理解の深化に寄与したいと考えています。一人の研究者として地道に中国とかかわりながら、チャイナ・ウォッチを続けています。
学生や高校生にひとこと!
とにかく日本語の本を読んでください。本を読むことで、抽象的なこと、概念的なことに対する想像力を鍛えて下さい。そのことで国際的に通用する思考力が身についていきます。
大学院で学びたい方にひとこと!
私のもとで研究をしたいという方がおられましたら、歓迎します。ご一報ください。日本研究や私の研究領域から若干外れた分野でも対応できます。東アジアの歴史や思想を一緒に学んでいきましょう。また現職の高校の先生や社会人の方も歓迎します。オンライン授業等で対応できます。