准教授

クラーマー スベン

クラーマー スベン

  • 日本文化学部
  • 歴史文化学科

更新日:2025.06.02

日本近現代史、地方史研究、市町村合併史

研究キーワード
日本史, 日本近現代史, 地方史研究

研究シーズの内容

市町村合併を中心に日本の地方行政区画・自治体の再編成の歴史について研究しています。市町村合併の中で住民の対応に特に興味があります。市町村首脳部と住民の関係、地元政治家の動向、合併をめぐる賛否の背景と展開などについて調べています。
住民の合併賛否では、経済的な利害関係だけで十分に説明できない事例があります。そこで「住民帰属意識」(ローカル・アイデンティティ等)を手掛かりに住民の合併への対応を分析しています。
また、2024年度に発足した「文化財調査活用総合研究所」と関わり、国指定重要文化財小栗家住宅に保管されている史料の保全活動と研究を進めています。

研究者からのメッセージ

住民帰属意識と言えば、地名が重要な要素の1つです。地名をめぐって自分の研究では福岡県筑紫郡太宰府町(現・太宰府市)と奈良県天理市の事例を取り扱いました。愛知県立大学に赴任した以来、地名に関して愛知・東海地方での新しい出会いをお楽しみにしています。

授業の内容と特長

自分の研究テーマは主に市町村合併の歴史ですが、授業ではこのテーマ限りでは当然ありません。講義と演習(ゼミ)で日本近現代史について幅広く教えます。幕末維新期からの急な変化、近代日本の国民国家と植民地帝国への発展、現在の日本に導いた戦後の改革など、社会的・経済的・政治的・法的・文化的な側面から検討しています。そして、常に国際的な目をもった検討を心がけています。単に「日本」だけではなく、「世界の中の日本」が大変重要なポイントです。特に演習では参加者全員との活発な議論を重視しており、講義にもなるべく「対話型」(紹介した授業の内容について話し合うこと)の授業を常に目指しています。授業のもう1つの重要な側面は、史料と専門研究を一緒に読んで、その文脈と意味または意義および課題について議論することです。それで日本近現代史とその研究についての知識を与えるだけでなく、(歴史的な)文章の読解力と分析力の強化も期待しています。

研究者になるきっかけは?

2007年度に、まだ母国ドイツの大学を卒業する前に、日本の大学の近現代史ゼミで1年間留学する機会がありました。そこで日本での大学生活に魅了されて、ドイツでの卒業後の日本での進学を目指すようになりました。簡単な道ではなかったのですが、先生を始め多数の仲間のサポートと自分の努力で目的が実現できました。

研究内容を大学での教育や、地域・社会にどのように還元していますか?

2024年10月に愛知県立大学の公開講座「激変する世界を地域から考える」で「ローカル・コミュニティの境界変更:市町村合併を中心に」という報告を行いました。本報告でローカル・コミュニティ(地域社会)の1つの境界線の事例として市町村の境界線を紹介し、市町村合併という境界線の変更が地域社会にどのような影響があるか、「昭和の大合併」(1950年代)の事例を手がかりに論じました。
2025年度の予定としては、7月の春日井市主催の「かすがいいきいきアカデミー」で「明治維新と市町村合併」というテーマの一般向け講演を行う予定です。また、10月に「国指定重要文化財小栗家住宅の新聞コレクションについて」というテーマで愛知県立大学の県民講座を開催する予定で、文化財調査活用総合研究所での成果を県民に幅広く紹介します。

学生や高校生にひとこと!

「日本近現代史」はオーソドックスな時代区分の中で一番短い区分で、始まりから200年もまだ経っていません。一方、2つの激変の時代でもあり、史料が大変多く残っているので、大変濃厚な中身の時代です。この濃厚さを一緒に味わいませんか?

大学院で学びたい方にひとこと!

「日本近現代史」の勉強をさらに極めたい方に大学院への進学をお勧めします。研究書や史料の深読みはもちろん、他分野からの仲間が出席する演習も用意されています。他分野からの意見も自分の研究成果をよりいいものにするために大変重要です。